~月夜の浜辺~
月夜の晩に、ボタンが一つ
波打際に、落ちてゐた。
それを拾つて、役立てようと
僕は思つたわけでもないが
なぜだかそれを捨てるに忍ばず
僕はそれを、袂に入れた。
月夜の晩に、ボタンが一つ
波打際に、落ちてゐた。
それを拾つて、役立てようと
僕は思つたわけでもないが
月に向つてそれは抛れず(ほふれず)
浪に向つてそれは抛れず
僕はそれを、袂に入れた。
月夜の晩に、拾つたボタンは
指先に沁み、心に沁みた。
月夜の晩に、拾つたボタンは、
どうしてそれが、捨てられようか?
ー中原中也ー
日をまたいでしまいましたが、、、今日10月22日は敬愛する詩人中原中也の命日でした。
雲が薄くかかった寂しくも幻想的な今宵の月に、中也の想いを重ね、ふとこの詩を思い出したので一筆、、、
おや墨なさい
希水
